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PRP(多血小板血漿)について

PRPとは?
採血した血液を遠心分離機により遠心分離することで赤血球、血小板やその他の成分に分け、血小板をたくさん含む濃縮された部分だけを取り出したものが多血小板血漿(Platelet- Rich Plasma)(PRP)と呼ばれるものです。

血小板には内部にたくさんの成長因子が含まれるので、これを放出させることによりさまざまな治療に利用することができるのです。自分の血液を使って作られているので、アレルギー反応も無いため高い安全性を有していることが特徴です。
医療としては、糖尿病性足壊疽、難治性潰瘍や褥瘡などの皮膚軟部組織の創傷治癒、骨の再生や治癒、顔や手のシワの改善などの再建外科、外傷外科、美容外科、アンチエイジングといった幅広い病態の治療に利用され高い有効性が認められつつあります。
血小板について
表1にあるように血液中の血小板は赤血球に次いで数が多く、止血や組織の修復に中心的な役割を果たす細胞であるとともに、表2のようにさまざまな成長因子を放出することがわかります。

■血小板について


■血小板から放出される成長因子

土井歯科クリニックで使用しているPRP
PRPとは末梢血血小板濃度の4~7倍以上に濃縮されたものを呼び、一般的にPRPの作成はダブルスピン法にておこなわれます。

ダブルスピン法とは、まず血液を採血容器に採取し最初の遠心分離をおこないます。そこから必要な成分を取り出し、新たな容器に移し替え、さらに2回目の遠心分離をおこないます。その遠心分離された容器から、血小板が濃縮された部分を分離し、最終的にシリンジに移されたものがPRPとなります。

このようにダブルスピン法によるPRPは作成過程が煩雑であり、途中での異物の混入の恐れや、作成に時間がかかることや、また得られたPRPのパフォーマンスが安定しない欠点が指摘されています。

土井歯科クリニックで採用しているPRP作成キットは、このような欠点が無く1回の遠心分離でクリアーな濃縮度の高いPRPを安定的に作成できる、きわめて有用なものを使用し治療に用いているのです。

写真1は、左から採血前の専用チューブ、採血後の状態、そして遠心分離された状態です。遠心分離された専用チューブの上澄み液のうち下部の黄色みがかった液体部分1ml~2mlがPRPとなります。

写真1)専用チューブの変化の過程


特筆すべきことは、PRP作成のための専用チューブはアレルギー、変異性等の安全性が確認されていることに加え、ヨーロッパでCE、アメリカではFDAの認可を取り、作成したPRPの再注入が許可されているキットだということです。(写真2、写真3)
すなわち、注射が可能なため医療分野でさまざまな治療に使用されているのです。

写真2)


写真3)
 

写真4は、PRP作成の一連の過程を示しています。採血した専用チューブを遠心分離するだけでクリアーなPRPを得ることが可能です。

写真4)PRP作成過程


写真5は、分離精製されたPRPで、作成量を変化させることで4倍~7倍程度の血小板濃縮度として治療に使用することができます。本来破棄されるはずのPPPからもフィブリン膜を作成し、治療に応用する工夫もできます。

写真5)取り出されたPRP

歯科領域のPRPによる治療
歯科領域では、まだまだPRPを利用して治療している施設がほとんどないのが現状です。
実際におこなわれている治療としては、腫瘍や嚢胞手術などの口腔外科分野、インプラント治療、歯周病治療における歯周外科手術、口腔周囲に注入(小じわ、ほうれい線の解消)するアンチエイジング治療があります。

土井歯科クリニックでは、これらのうちインプラント治療と歯周外科治療に取り入れ多くの症例に応用しています。PRPを応用することで、手術にさまざまな工夫をこらすことが可能となりました。
ホームページの性格上、専門的なことを述べても難しくなるので利点、欠点として図1のようにわかり易く表示しました。

■図1:PRPの利点・欠点

1.成長因子の働きにより傷の治りが早くきれいで治療期間の短縮が可能
2.複雑な手技を単純化できることにより手術回数を減らすことが可能
3.人工骨を扱い易く、より確実性の高い再生治療にすることが可能
4.腫れ、痛みを少なくできる
5.感染の危険を減らせる
6.アレルギーの心配がない 


1.採血が必要
2.血液検査によってはできないこともある
インプラント治療への応用例 
■写真6)初診時のレントゲン写真
■写真7)同部のCT像
写真6は、初診のときに撮影したレントゲン写真です。
写真左側の歯の付け根の部分が、ほぼすべてむし歯になりグラグラとし、痛くて咬めない状態でした。

写真7は同じ部位をCTでくわしく調べた像です。
この時は上部の冠の部分がすでに脱落し、歯全体がむし歯により失われ、根の部分が非常に短く周囲の骨も無くなりはじめていることがわかると思います。また、上部の黒い部分は上顎洞と呼ばれる空洞なのですが、空洞までの距離もほとんどなくインプラント治療が難しいことが想像できると思います。


■写真8)PRPで固形化された人工骨
写真8はPRPを使って固形化された人工骨で、今紹介しているインプラント手術の時に用いたものです。

このような形態にすることで、とても扱い易くなると同時にPRPの成長因子を効果的に発揮させることができます。

これ以外にもさまざまな場面で応用するのですがホームページ上では割愛させていただきます。



 

写真9)インプラント埋入後のレントゲン写真
写真9は術後のレントゲン写真で、インプラントが埋入されていることがわかると思います。埋入されたインプラントの先には、空洞(上顎洞)の中にドーム状に盛り上がった人工骨と下部の土台周囲にも人工骨があり、インプラント全体が骨と人工骨で十分に囲まれています。

写真8の人工骨はレントゲン写真でこのように見ることができます。この手術では途中さまざまなステップがあり、すべてを写真掲載できませんが、PRPの使用は複雑で多くの手技を1度に済ますことができ、しかも手術時間の短縮も可能です。

図2にこの手術で行った詳しいステップを示してあります。



 

■図2)手術のステップ


■写真10)完成後のレントゲン写真  ■写真11)完成したインプラント
写真10、11は完成したインプラントの写真ですが、インプラントの埋入手術をして3か月後にはこのように完成し、問題なく機能しています。PRPを使用することで難症例と思われる手術も1度きりで短期間に治療することが可能になりました。

また、PRPなしでも十分治療は可能ですが、前述したように多くの利点を有しているため、特に骨量の少ない難症例と呼ばれる埋入には必須かと考えています。

以下に同様のインプラント治療をPRPを使わない場合の一般的なステップを示しているので参考にしてみて下さい。

■図3)PRPを使わない場合



図3のように全部で3回の手術が必要となり、それぞれ傷が治るまで数か月待たなければなりません。
このように、手術3回と4~8か月の期間を経てインプラントの上部構造が製作できるようになることから、インプラントの完成まで約5~9か月と長い期間が必要になります。

手術回数が増えることは、それだけ麻酔の回数やメスの使用回数が増えることになり、患者さん自身のストレスや手術後の瘢痕(ケロイド)など不利益の増加につながると思われます。

*インプラント埋入手術は施設によってさまざまな手技がおこなわれているので詳しくは各施設にお問い合わせ下さい。
歯周外科治療への応用例
土井歯科クリニックでは、開業当初より歯周病治療に力を入れ保険適応の歯周外科手術を年間100例以上手掛け、抜歯という最悪の選択から数多くの歯牙を救ってまいりました。

保険治療でもこれだけのことができるとの思いから、保険適応のある骨補填剤(人工骨)も取り入れこれまでがんばってきました。しかしながら、骨補填剤の取り扱いが難しいといったことや、傷の治りがおそい、知覚過敏により歯がしみるといった症例も見受けられ、保険治療の限界といったことも感じていました。

一方では、自費治療として歯周組織再生誘導材料のエムドゲインを使った歯周外科手術も知られています。
図4は保険治療、エムドゲイン、PRPそれぞれの歯周外科治療についての比較をわかり易く表示したものです。

■図4)それぞれの歯周外科治療の比較



■写真12)術前のレントゲン写真 ■写真13)術後のレントゲン写真
写真12は歯周外科手術前のレントゲン写真です。
症例は5年前に当医院でインプラント治療を受けとても順調に経過していました。しかしながらここ1~2年インプラントと接する自分の歯が歯周病によりグラつき咬めなくなってきました。

早期の治療を勧めていたものの仕事の都合もあり放置されてきました。手術前の咬むことが苦痛になりはじめたころに撮られたレントゲン写真ですが、歯周病の進行により周囲の骨がかなり喪失していることがわかると思います。

写真13はPRPを使用した歯周外科手術3か月後のレントゲン写真です。
歯の周囲は人工骨で緊密に覆われ、周囲の骨とも同化しているように見えると思います。

このようにPRPを使うことで早期に修復することが可能になります。